ブラジルのサッカーは、試合が終わっても終わらない

舗装された路上で、裸足の2人が足元のボールを競り合う。
ブラジルの路上でのサッカー(2014年6月22日撮影)。
“Boys playing street football 01.jpg” — Agência Brasil / CC BY 3.0 BR

ブラジルの選手が子どものころに憧れたチームを聞くと、有名クラブや代表チームを想像するかもしれません。

フットサル選手のレアンドロ・リノが夢見ていたのは、身近なアマチュアチームでプレーすることでした。大きくなったころにはそのチームはなくなっていて、夢はかなわなかった。それでも、応援していた時間は楽しかったと振り返っています。

世界の舞台に立つ選手にも、近所のチームに憧れていた時代がある。ブラジルのサッカーを知る入口として、少し気になる話です。

多くの選手を育ててきた背景には、どんな日常があるのでしょうか。練習の中身と一緒に、サッカーを好きになり、続けたくなる場所を見てみたいと思います。

試合の日に集まるのは、選手だけではない

サンパウロのサッカー博物館が2024年から2025年にかけて開いた「Vozes da Várzea」展には、少し意外な展示物がありました。ピッチの脇で使われる、バーベキューの焼き台です。

展示のテーマは、地域のアマチュアサッカー。応援、音楽、食事、チームを支える家族。ボールを追う選手だけでなく、試合のまわりにある時間も紹介されていました。家族でクラブの活動を手伝い、試合の前後には音楽や食べ物を楽しむ。見る側や支える側にも、関わる場所があります。

地域のサッカーを見守る、顔立ちと年齢感の異なる3人。

有名選手を見るためにスタジアムへ行くのとは、また少し違う楽しさです。応援する相手が近くにいて、会えば話せる人たちがいる。試合の日は、地域の人が集まる日でもあるのでしょう。

博物館の関連イベントでも、音楽の演奏や地域サッカーに関わる商品の販売が行われました。地元チームのシャツを着て行くと入場無料になる企画もあります。シャツはプレーする人の道具であると同時に、「このチームが好きだ」と伝えるものにもなっています。

リノが憧れた地域のチームの話も、ここにつながります。「自分もあそこでやってみたい」と思える相手が、暮らしの近くにいる。サッカーを始める理由は、そういう身近なところにもあるのです。

好きになった先で、何度もボールに触れる

黄色いブラジル代表のユニフォームを着て、ボールを扱うコウチーニョ。
コウチーニョ(2018年)
Ben Sutherland / CC BY 2.0
写真の出典

もちろん、身近にチームがあるだけで、巧い選手が育つわけではありません。好きになった先に、プレーを覚え、試せる場所があることも必要です。

コウチーニョは、6歳から13歳までフットサルを続けたとUEFAのインタビューで話しています。判断力や技術、狭い場所でプレーする力を身につけるうえで、その経験が役立ったというのです。

相手が近ければ、ボールを受けてからゆっくり考える余裕はありません。どちらへ動くか、いつパスを出すか。覚えた技を使うだけでなく、その場で選ぶことになります。

彼の話で面白いのは、ボールの扱いと判断が切り離されていないことです。技術があっても、使うタイミングが遅ければ相手に寄せられてしまう。素早い試合の中で、その両方を繰り返し試していたわけです。

「ブラジル人だから足元が巧い」で終わらせると、この過程が見えなくなります。どんな場所で、どんな相手と、何をして遊び、練習してきたのか。その方が、ずっと知りたくなる話ではないでしょうか。

遊びの場と、クラブの育成をつなぐ

フットサルの経験は、プロクラブの育成にも組み込まれています。

サントスは2024年、幼い年代のフィールドサッカーのカテゴリーを正式に設けました。フットサルとサッカーの連携を進める取り組みで、同じ選手と指導者が両方に関わる形です。

9歳までは、フィールドでもコートやゴールを小さくした7人制でプレーする。若い選手が、芝、ボールの大きさ、人数、ルールの違いに少しずつ慣れていくようにしています。

狭いコートと広いピッチでは、同じパスでも距離や相手の寄せ方が変わります。片方で覚えたことを、違う条件でも使ってみる。サントスの取り組みを読むと、遊ぶ場所の違いを、育成の中にも残そうとしていることがわかります。

地域のチームに憧れたリノ、フットサルで育ったコウチーニョ、二つの競技を組み合わせるサントス。同じ道を通った人たちの話ではありません。ただ、それぞれの話には、好きになるきっかけと、プレーを磨く場が見えてきます。

選手を育てるのは、特別な練習方法だけではない。サッカーを身近に感じ、ボールを蹴りたくなり、違う相手や場所で試す。その積み重ねを受け止める場があることも、ブラジルのサッカーを支える土台なのでしょう。

ブラジルで見たいのは、ピッチの外にもある

ブラジルへサッカーを学びに行くなら、どんな練習ができるか、どんな相手と試合ができるかは、まず気になるところです。そのうえで、地域の試合を見たり、プレーを続ける人と話したりする時間も面白そうです。

誰が応援に来ているのか。なぜそのチームを好きになったのか。試合が終わったあと、人はどんな話をしているのか。そんなことを聞いてみると、練習メニューからはわからないサッカーの姿が見えてきます。

好きなチームのシャツを着て、いつもの場所へ行く。そこで知り合いに会い、試合を見たり、ボールを蹴ったりする。ブラジルのサッカーを訪ねるなら、上手なプレーと一緒に、そこへまた行きたくなる理由も知りたくなります。

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