ブラジルへサッカー留学——クリチバの毎日が育てるもの

ブラジル南部、パラナ州の州都クリチバ。この街のサッカー施設「Stival Sports(エスチヴァル・スポーツ)」では、日本の小・中学生が現地の子どもたちと同じピッチでボールを追っています。朝から夕方まで、サッカー一色の毎日。言葉も食べ物も違う国で、子どもたちは何に驚き、どう変わっていくのか。同クラブでアジアからの留学生の受け入れを担当するGuido Kochi氏に、現場の「リアル」を聞きました。

練習後の記念撮影。名前入りの背番号10のユニフォームを手にする留学生も

サッカー留学と聞くと、多くの人はまずヨーロッパを思い浮かべるかもしれません。整ったピッチ、戦術的なトレーニング、トップクラブの育成組織。一方で、ブラジルという選択肢には、欧州とはまったく違う魅力があります。

Kochi氏はこれまで、10歳前後で海を渡ってきた子どもたちをクリチバで迎え、その成長を見てきました。その経験から出てくる言葉は、華やかな夢物語ではありません。「楽しい」と「厳しい」の両方です。この記事では、到着の日から寮での暮らし、練習の様子、そして伸びる子の共通点まで、写真とともにたどっていきます。

到着の日は、空港での出迎えから

日本からブラジルへの直行便はなく、クリチバまでは乗り継ぎを重ねる長旅になります。長いフライトを終えて空港の到着口を出たところから、現地でのアテンドが始まります。

クリチバの空の玄関口、アフォンソ・ペナ国際空港(CWB)
アフォンソ・ペナ国際空港(CWB)。

Kochi氏によると、到着後の流れは次のとおりです。

  1. 空港送迎:到着口で出迎え、クラブまで移動
  2. 入寮:滞在中に暮らす寮へ
  3. オリエンテーション:クラブでの生活ルールや過ごし方を説明
  4. 練習の説明:練習の進め方や参加のしかたを伝える

最初の2〜3日は、担当者が子どもたちと一緒に過ごし、練習と私生活の両方をサポートします。その後は、クラブ側の各担当者が責任を持って対応する体制です。クラブは長年、海外からの研修生を受け入れてきており、受け入れの仕組みができあがっているといいます。

知らない国に着いたその日に、迎えてくれる大人がいる。子どもにとっても、日本で待つ家族にとっても、この「最初の数日」の安心感は大きいはずです。

受け入れ先は、プロクラブの育成拠点

Stival Sportsは、クリチバ市内でサッカー施設を運営する民間の組織です。創業者はRafael Stival氏。市内の「Trieste Stadium(トリエステ・スタジアム)」と「Iguaçu Stadium(イグアス・スタジアム)」という2つの施設を拠点にしています。

現地報道によると、Stival Sportsは2025年まで、ブラジルの人気クラブ・Flamengo(フラメンゴ)の育成提携拠点として、才能ある子どもたちを発掘・育成してきました。ここを経由してプロになった選手には、ブラジル代表経験のあるレナン・ロディ選手やレオ・ペレイラ選手らが挙げられています。

そして2026年1月からは、クリチバを本拠地とするAthletico Paranaense(アトレチコ・パラナエンセ)との提携が始まりました。報道では、Trieste StadiumがU-8〜U-13の選手の発掘と最初の評価を担う拠点に、Iguaçu Stadiumが合格した選手を育てる育成拠点に位置づけられています。契約期間は2027年12月までで、延長の可能性もあると伝えられています。

写真の子どもたちが着ている練習着にも、Athletico Paranaenseのロゴと「PARANAENSE」の文字が入っています。日本から来た子どもたちが、ブラジルのプロクラブにつながる育成の現場に身を置いていること。これが、この留学のいちばんの特徴です。

施設は屋外のスタジアムだけではありません。大きな屋根に覆われた人工芝のピッチもあり、雨の日でも練習ができます。Iguaçu Stadiumについては、公式戦用のスタジアム(500人収容のスタンド付き)、24時間利用できるトレーニングジム、屋内の人工芝ピッチ、レストランを備えると報じられています。

Kochi氏は率直です。「施設だけを比べれば、ヨーロッパの方が良いところは多いと思います」。そのうえで、Stival Sportsの施設は「ブラジルの育成クラブとしてはトップレベル」だと話します。

注: 留学プログラムに参加することが、Athletico Paranaenseの育成カテゴリーに正式に所属することを意味するわけではありません。どの枠で練習に参加し、試合に出る機会があるのかは、申し込み前に個別に確認してください。

Athletico Paranaense(CAP)とStival Sportsのロゴが並ぶ建物の前で
Athletico ParanaenseとStival Sportsのロゴ。
スタンドを備えた人工芝のスタジアム
屋根付きの人工芝ピッチ

サッカーのそばで暮らす、寮と食事

留学中の住まいは寮です。練習場のすぐそばで寝起きし、食べ、またボールを蹴る。日本の生活とはリズムがまったく違います。

写真の部屋は、明るい床に木製の2段ベッドが並ぶシンプルなつくりです。寮には、大型の業務用洗濯機・乾燥機が置かれたランドリーもあります。毎日の練習着を洗うのも、生活の一部です。

食事はブラジル流

Kochi氏が「最初の壁」のひとつに挙げるのが食事です。ブラジルの食卓は、ご飯と豆の煮込み(フェイジョン)、グリルした肉などが定番。写真の食堂では、並んだ料理から自分で取り分けるビュッフェ形式がとられています。

「ブラジルの食事に慣れること、そして環境に早く順応できること。それが一番の基本だと思います」とKochi氏。好き嫌いなく、まず食べてみる。それだけで、体づくりも友達づくりもぐっと進みます。

朝から夕方まで、サッカー一色の練習環境

日本から来た子どもたちが最も驚くのは何か。Kochi氏の答えはシンプルです。「朝から夕方まで、サッカー一色の環境で練習することですね」。

クラブの育成部門にはU-8からU-17までのカテゴリーがあり、一日中どこかのピッチで子どもたちがボールを蹴っています。サッカーが「放課後の習い事」ではなく、生活の真ん中にある。その空気の中に飛び込むこと自体が、日本ではなかなかできない経験です。

練習の合間、コーチは選手を集めて短く、熱く語りかけます。言葉がすべて分からなくても、身ぶりと表情、そしてボールが伝えてくれることはたくさんあります。

コーチの話に耳を傾ける選手たち。ブラジルの子どもたちの中に日本の留学生の姿も

練習場には、いつも「見ている目」がある

ブラジルの練習場には、子どもの親をはじめ多くの人が見に来ています。Kochi氏によれば、その中にはスカウトが混じっていることもあります。

「ブラジルでは、どこに行っても練習で100%、試合で100%を出す。それを頭に入れておかないと、プロへの道は難しいと思います」

一回一回の練習が、誰かに見られている場かもしれない。その緊張感が、子どもたちを変えていきます。

屋根付きピッチでコーチの説明を聞く日本の子どもたち

インタビュー:Guido Kochi氏に聞く「ブラジル留学のリアル」

Q.なぜ今、ヨーロッパではなくブラジルなのでしょうか。

「ブラジルとヨーロッパのサッカーで、まず違うのは環境だと思います。施設面ではヨーロッパの方が良いところが多い。でも、ブラジルの一番の魅力は人です。ブラジル人はフレンドリーで、選手も、コーチも、スタッフも、みんなすぐに“アミーゴ(友達)”になります。その中で練習するので、個人技を磨くには、ほかの国にはない魅力のある環境だと思います」

Q.留学すれば誰でも上手くなるわけではないと思います。スカウトの目に留まる子と、そうでない子の違いは?

「まず、環境にすぐ慣れられるかどうかです。素質があっても、慣れるまでに時間がかかる子もいます。短期留学だと、自分のパフォーマンスを見せられる期間が短い。できれば3か月くらいいれば、スカウトの目に留まる可能性も出てくると思います」

Guido Kochi氏
Guido Kochi氏。

Q.「この子は化けたな」と感じる子には、どんな共通点がありますか。

「環境に早く順応できる子です。言葉ができなくても、誰とでも接して、グループの中に入っていける子は早く溶け込めます。そういう子には、練習試合でもボールが回ってくる。みんなと早くなじめる選手が、伸びると思います」

Q.日本の子が最初にぶつかる壁は何ですか。

「やはり言葉です。多少でも話せないと、慣れるまでに時間がかかります。簡単な英語でもいいので、少しでもできればもっと早く練習になじめると思います。スタッフはほとんどが多少は英語を話せますから。それから、ブラジルの食事に慣れること。環境に早く順応できることが、一番の基本です」

Q.ホームシックやトラブルはありませんか。

「これまで来た子どもたちの中で、『帰りたい』と言った子はほとんどいません。逆に、『このまま残ってブラジルで暮らしたい』という子の方が多いくらいです。ブラジルの選手は、外国から来た選手にすごくフレンドリーで、自分たちから寄っていって、いろいろ教えてあげる。そこはほかの国と違うところだと思います」

Q.どんな性格の子が、ブラジル留学で一番伸びますか。

「毎回言うのですが、自分からブラジルの選手の中に入っていける、積極性のある子です。ブラジルの子どもたちも寄ってくるタイプが多いので、すぐに友達になれて、サッカーを楽しくできると思います」

日本とブラジル、育成は何が違うのか

Kochi氏がいちばんの違いとして挙げるのは、技術でも戦術でもなく「上下関係」でした。

「日本には上下関係があって、伸びるはずの選手が伸びない場合もあります。先輩と後輩、コーチと選手の間にははっきりとした序列があり、そこに厳しさもあります。ブラジルには、そういう上下関係はありません。コーチも厳しいときは厳しいですが、ほとんどは友達のような感じで一緒に練習して、楽しく練習できる環境をつくっています」

年齢や立場に関係なく、良いプレーをした子にボールが集まり、声がかかる。遠慮していたら、ボールは回ってこない。この環境で「自分から前に出る」経験を積むことは、サッカーの技術以上の財産になるかもしれません。

帰国後に意識しておきたいこと

一方で、Kochi氏は帰国後の注意点も率直に語ります。

「今の日本は、ヨーロッパ流のパスを回すサッカーをしています。ブラジルのサッカーはどちらかというと、個人の技術と、体をぶつけ合う激しさのあるサッカー。そこは違うので、研修生も帰国してからそれを頭に入れて練習しないと、逆に使ってもらえないこともあるかなと思います」

ブラジルで身につけた個人技と球際の強さを、日本のチームの戦い方の中でどう生かすか。留学は「行って終わり」ではなく、帰ってからがもう一つのスタートです。

空港での手続きを待つ一行

Kochi氏が描くこれから

研修を終えて日本に帰る子の多くは、10歳から15歳くらい。Kochi氏は、ブラジルで過ごした経験を子どもたちが日本でアピールできる環境をつくり、彼らが日本でもっと活躍できるような体制を整えていきたいと話します。

ピッチの外で出会う、クリチバの街

クリチバはパラナ州の州都で、標高900mを超える高原にある街です。「ブラジル=一年中暑い」というイメージとは違い、ブラジルの中では涼しい気候で知られ、冬(6〜8月)には冷え込む日もあります。写真の子どもたちがジャケットやパーカーを着ているのも、そのためです。

クリチバのレストラン「Família Madalosso」の前で記念撮影
レストラン「Família Madalosso」の前で。

街にはヨーロッパからの移民がつくった文化も色濃く残り、イタリア系移民の地区として知られるサンタ・フェリシダーデには大型のイタリア料理店が並びます。練習漬けの毎日の中で、こうした街の空気に触れる時間も、留学ならではの思い出になります。

出発前に準備しておきたいこと

「まずは、ブラジルで楽しくサッカーをしたいという気持ちで来てほしい」。準備について聞くと、Kochi氏は最初にそう答えました。ブラジルは遠い国なので、到着して最初の1週間ほどは慣れるまで大変だといいます。それでも、慣れてしまえば「帰りたくない」と言う子の方が多いというのが、これまでの経験です。

Kochi氏の話をもとに、日本にいるうちにできる準備のポイントをまとめます。

  • 「楽しみたい」という気持ち:何より大切なのは、ブラジルで楽しくサッカーをしたいという気持ちです。
  • 簡単な英語とあいさつ:スタッフの多くは英語を少し話せます。英語で自己紹介ができ、「オブリガード(ありがとう)」などポルトガル語のあいさつをいくつか知っていれば、なじむまでの時間がずっと短くなります。
  • 自分から輪に入る姿勢:伸びるのは、言葉ができなくても自分から仲間の中に入っていける子です。知らない相手に話しかける経験を、日本でも積んでおきましょう。
  • 何でも食べてみる:ブラジルの食事に慣れることが、順応の第一歩です。
  • 滞在期間の目安:スカウトに力を見てもらうことを目指すなら、3か月ほどが一つの目安です。
  • 最初の1週間は大変で当たり前:到着直後の戸惑いは誰もが通る道です。慣れてしまえば、「帰りたくない」と言う子のほうが多いといいます。

申し込み前に確認しておきたいポイント

この記事の内容は、Kochi氏への取材と公開報道にもとづいています。参加条件は時期やプログラムによって変わる可能性があるため、保護者の方は次の点を事前に確かめておくと安心です。

  • 費用:滞在期間ごとの総額と、その内訳(寮費・食費・送迎・練習参加費など)
  • 練習と試合:どのカテゴリー・どの枠で練習に参加し、試合に出る機会があるか
  • 滞在の形:保護者の同伴が必要か、子どもだけで滞在できるか
  • 安全と医療:ケガや病気のときの対応と、海外旅行保険でカバーされる範囲
  • 渡航書類:ビザなどの要否(滞在期間や目的で変わる場合があるため、在日ブラジル大使館・総領事館で確認)
  • 連絡体制:緊急時の連絡方法と、日本語で相談できる窓口
  • 日本側の調整:学校や所属チームとのスケジュール調整

気になる点は、記事末尾の窓口へご相談ください。

指導者の研修も受け入れています

Stival Sportsが受け入れているのは、選手だけではありません。指導者を対象にしたコーチ研修も行っており、日本の少年団やクラブチーム、スクールのコーチも現地で学ぶことができます。

朝から夕方までサッカー一色の育成の現場で、ブラジルのコーチは子どもたちにどう声をかけ、どう練習を組み立てているのか。Kochi氏が語る「友達のような感じで一緒に練習する」関係を、自分の目で確かめられる機会です。

研修の内容・期間や、子どもたちの留学にコーチが同行する場合については、記事末尾の窓口へご相談ください。ご希望を伺い、Kochi氏に確認します。

受け入れの概要

項目 内容
受け入れ先 Stival Sports(エスチヴァル・スポーツ)
所在地 ブラジル・パラナ州クリチバ市
取材協力 Guido Kochi氏(アジア留学生受け入れ担当)
受け入れ対象 個人・団体・コーチ
コーチ研修 指導者向け研修を受け入れ。内容・期間・同行については記事末尾の窓口へ相談
対象年齢 8〜14歳
主なサポート 空港送迎、入寮、オリエンテーション、練習の説明。到着後2〜3日は担当者が同行
提携クラブ Athletico Paranaense(2026年1月から。契約期間は2027年12月までと報道)
目安の滞在期間 スカウトに見てもらうなら3か月程度が望ましい(Kochi氏)

クリチバ留学に興味を持った方へ

株式会社ウッドアイフィールドでは、この記事で紹介したStival SportsのGuido Kochi氏へのご紹介を行っています。「まずは話を聞いてみたい」「うちの子に合うか相談したい」という段階でも、お気軽にお問い合わせください。

お子さまの留学だけでなく、指導者の方のコーチ研修についても、Kochi氏におつなぎします。

ご相談の際は、次のことをお知らせいただくとスムーズです。

  • お子さまの年齢と、サッカー歴・所属チーム
  • 希望する時期と滞在期間
  • 参加の形(個人・団体・コーチ)

ご相談窓口:株式会社ウッドアイフィールド(Woodeyefield Inc.)

ブラジルと日本の間で、関係先の紹介や調整を含む事業支援を行っています。クリチバ留学のご相談は、公式お問い合わせフォームまたはcontact@woodeyefield.comへ。「クリチバ留学の記事について」とお知らせください。

参考資料

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