ブラジルから日本へ、何がどこから来ているか——貿易統計でつくる調達地図

コンテナと貨物船が見えるブラジルの港湾を上空から見た様子
Photo: Rafael de Campos / Pexels

ブラジルから何か仕入れられないか。そう考えたとき、最初に手が届く資料が、公開されている貿易統計です。ブラジル政府の開発商工サービス省(MDIC)が運営するComex Statでは、どの品物が、どの国へ、どの州から、いくら分輸出されたかを誰でも調べられます。日本向けだけを取り出すことも、州ごとの金額を並べることもできます。

ただ、この統計には最初に知っておきたい癖があります。画面で「州」と書かれている欄が、一つの意味ではないのです。商品が作られたと申告された州を示す欄もあれば、輸出した会社の税務上の所在地を示す欄、貨物が通関した場所を示す欄もあります。同じ地名が、違う意味で二度出てくることさえあります。

この違いを知らずにランキングを一枚だけ眺めると、金額の大きい州をそのまま産地だと読んでしまいます。この記事では、2025年の実際のデータをたどりながら、ブラジルから日本へ何がどこから来ているのか、公開統計で調達候補の地域をどこまで絞れるのか、そしてどこから先は企業への直接確認が必要になるのかを整理します。

なお、この記事の数値は2025年1月から12月の輸出実績で、2026年8月19日にComex Statの原データから集計したものです。金額は物価調整をしていない米ドル建てのFOB金額です。

1. 何が、どれくらい来ているのか

2025年にブラジルから日本へ輸出された品物は、金額にして約54億8,885万米ドルでした。中身を見ると、上位10品目で全体の83.34%を占めます。

2025年ブラジルから日本への輸出・SH4上位10品目
順位SH4品目概要FOB米ドル構成比正味重量
10901コーヒー1,034,364,74218.84%149,663.5 t
22601鉄鉱石955,636,39617.41%12,627,542.5 t
30207家禽肉・食用くず肉840,058,52215.30%400,452.5 t
47601アルミニウムの塊433,384,8377.90%171,539.1 t
50203豚肉388,533,4067.08%113,671.1 t
67202フェロアロイ287,157,8295.23%75,002.8 t
71201大豆257,372,3294.69%654,483.1 t
82304大豆油かす等158,338,4322.88%461,482.7 t
94703化学木材パルプ121,277,0112.21%269,745.7 t
102009果実・野菜ジュース98,752,6031.80%21,090.7 t
最も大きいのはコーヒーで18.84%、次いで鉄鉱石17.41%、鶏肉などの家禽肉15.30%と続きます。上位が全体の8割を超えるということは、品目を一つずつ追いかけていけば、日本向けの取引のかなりの部分をたどれるということです。逆に「ブラジル」という大きな単位のままでは、平均像しか見えてきません。

ここで、表の読み方に二つだけ注意があります。

一つは、金額と重量が別の物差しだということです。鉄鉱石は1,262万トン、コーヒーは14万9,663トンと重量では大きく離れていますが、金額ではほぼ並んでいます。同じ品目の中で年ごとの動きを見るには重量が役立ちますが、性質の違う品目の重量を足し合わせて重要度を測ることはできません。

もう一つは、金額が増えても量が増えたとは限らないことです。コーヒーがまさにその例で、JETROがComex Statをもとに整理した比較では、2024年から2025年にかけて金額は5億6,300万米ドルから10億3,400万米ドルへと83.7%増えました。一方、数量は229万袋から249万袋(1袋60kg)への9.1%増にとどまります。JETROは国際価格の上昇を要因として挙げており、金額の伸びをそのまま供給量の伸びとして読むことはできません。

なお、表の品目は国際的な4桁の分類(SH4)でまとめたものです。同じ枠の中には、規格も用途も違う商品が同居します。実際の取引では、ブラジルの8桁分類(NCM)まで特定して、統計で見ている範囲を商談の対象に近づけます。ただしコードが揃っても、規格、品質、加工の程度、用途、荷姿まで同じになるわけではありません。そこから先は、候補ごとに個別に確かめる作業になります。

2. 「どこから」の答えは、
一つではない

品目が決まったら、次に知りたいのは産地です。ところが統計を開くと、地域を示す欄がいくつも出てきて、しかもそれぞれが違う出来事を記録しています。

整理すると、次の四つになります。調達調査では、この四つを別のものとして扱う必要があります。

  • 商品が生産されたと申告された州。統計上の生産州にあたり、データ上は「商品UF」と呼ばれます。
  • 輸出した会社の税務上の所在地。州の粗さで見るものと、市町村まで見るもの(市町村別データ、Municipality module)があります。
  • 貨物が通関した税関単位(URF)。ブラジル連邦国税庁の管轄単位です。
  • 貿易統計の外にある生産統計。IBGE、CONAB、ANMなどの機関が、収穫量、鶏の屠畜羽数、精鉱の生産量といった数字を、それぞれの定義で公表しています。

このうち、統計上の生産州と、輸出した会社の税務上の所在地は、どちらもComex Statから取り出せます。ただしMDIC自身が、二つは方法が異なるため直接比較すべきではないと説明しています。全国の合計額は一致しますが、州ごとの数字を並べて差を取り、その差に意味を持たせることはできません。

実際に2025年の対日輸出を二通りに数えると、上位の顔ぶれはよく似ています。

2025年対日輸出を商品UFと輸出者の税務UFで見た上位州
順位商品UFで見た場合輸出者の税務UFで見た場合
商品UFFOB米ドル総額比輸出者の税務UFFOB米ドル総額比
1ミナスジェライス州1,493,953,23427.22%ミナスジェライス州1,461,908,92826.63%
2パラ州1,008,319,13518.37%パラ州1,001,148,37018.24%
3サンタカタリーナ州688,628,85012.55%サンタカタリーナ州849,008,44615.47%
4サンパウロ州569,955,29910.38%サンパウロ州649,838,85511.84%
5パラナ州402,281,2527.33%パラナ州436,880,6787.96%
6リオグランデドスル州257,842,9674.70%エスピリトサント州235,612,7504.29%
7マットグロッソ州245,261,5304.47%マットグロッソ州217,222,6963.96%
8エスピリトサント州235,745,0574.29%リオグランデドスル州166,245,1303.03%
三位のサンタカタリーナ州を見ると、統計上の生産州として数えたときは12.55%、輸出した会社の税務上の所在地として数えたときは15.47%です。似ているからこそ、この差を引き算して「差の分が本社機能だ」と読みたくなります。それはできません。左は「その商品はどこで作られたと申告されたか」、右は「その輸出申告を出した会社の税務上の所在地はどこか」という、別々の問いへの答えだからです。右の数字は、その会社が実際にどこで生産や加工、保管をしているかを示すものではありません。

それぞれの欄が何を表し、何を表さないのかをまとめると、次のようになります。

統計項目が表すもの、表さないもの
項目表すもの表さないもの
商品UF(一般データ)MDIC定義上の、商品の生産州輸出者本社、工場、農場、鉱山の特定
輸出者の税務UF輸出者の税務上の所在地(州)商品の生産地、実際の事業活動の場所
Municipality module(市町村別データ)輸出者の税務上の所在地(市町村)生産市町村、積出港
URF連邦国税庁の税関単位正式な港湾取扱統計
港湾(ANTAQ等)実際の港湾・ターミナルの取扱URFとの常時一対一の対応
FOB金額輸出書類上の名目米ドルFOB額CIF額、インフレ調整後の価値、日本到着時の原価
正味重量貨物の正味重量品質、個数、生産能力、在庫
SH4複数NCMをまとめた4桁分類同一グレード・同一用途であること
つまり、ブラジルの調達地図は一枚では足りません。生産の地図、輸出申告に書かれた商品の地図、輸出した会社の税務上の所在地の地図、通関の地図。この四枚は、同じ品目でも重なりません。ここから先は実際の品目で、その不一致がどう現れるかを見ていきます。以下に出てくる州の位置は、次の地図で確認できます。
本記事で言及するブラジルの州の位置図 ブラジルの地図上に、本記事で言及する8州の位置を示したもの。輸出量・生産量・物流経路などの数値データは含みません。

この地図は位置のみを示します。輸出量・生産量・物流経路は示していません。

MG
ミナスジェライス州
ES
エスピリトサント州
SP
サンパウロ州
PR
パラナ州
SC
サンタカタリーナ州
MT
マットグロッソ州
GO
ゴイアス州
PA
パラ州
本記事に登場する州の位置。統計上の分布や物流経路は示していません。 州境データ:IBGE API de malhas geográficas(IBGE Dados Abertos、2026年8月19日確認)

3. コーヒー——
四枚の地図を、一つの品目で見る

まず、対日輸出の最大品目であるコーヒー(約10億3,436万米ドル、14万9,663トン)を、四つの見方で並べてみます。

2025年対日コーヒー輸出を四つの軸で見た分布
分布(FOB金額比)
商品UFミナスジェライス州 86.8%/サンパウロ州 8.3%/エスピリトサント州 2.5%/バイーア州 1.3%
輸出者の税務UFミナスジェライス州 86.6%/サンパウロ州 9.0%/エスピリトサント州 2.6%
輸出者の税務上の市町村(Municipality module)ヴァルジーニャ 31.2%/グアシュペ 15.5%/マシャド 5.5%/アルフェナス 4.5%/サントス 3.8%
URF(税関単位)サントス 93.9%/リオデジャネイロ 4.1%

サントスは、輸出した会社の税務上の市町村とURF(税関単位)という別の欄に現れています。

統計上の生産州は、ミナスジェライス州(Minas Gerais)が86.8%。輸出した会社の税務上の所在地も、同じくミナスジェライス州が86.6%です。ところが通関の93.9%は、サンパウロ州の港湾都市サントス(Santos)に集中しています。

これとは別に、CONABの2025年コーヒー生産調査(第4回)は、全国5,650万袋(1袋60kg)のうち、ミナスジェライス州が約45.7%、エスピリトサント州が約31.0%、サンパウロ州が約8.3%という生産構成を示しています。

全国のコーヒー生産構成と対日輸出の商品UF構成 二つの独立した横棒グラフ。一つ目は全国のコーヒー生産構成(CONAB 2025年コーヒー生産調査第4回、全国5,650万袋・60kg換算に対する構成比)で、ミナスジェライス州 約45.7%、エスピリトサント州 約31.0%、サンパウロ州 約8.3%。二つ目は対日輸出の商品UF構成(Comex Stat 2025年、SH4 0901、FOB金額比)で、ミナスジェライス州 86.8%、エスピリトサント州 2.5%、サンパウロ州 8.3%。二つは母集団と単位が異なる別の統計であり、構成比を差し引きして差の原因を説明することはできない。表示は上位3州のみで合計は100%にならない。 全国の生産構成 ミナスジェライス州 約45.7% エスピリトサント州 約31.0% サンパウロ州 約8.3% CONAB 2025年コーヒー生産調査(第4回)/ 全国5,650万袋(60kg換算)に対する構成比 対日輸出の商品UF構成 ミナスジェライス州 86.8% エスピリトサント州 2.5% サンパウロ州 8.3% Comex Stat 2025年/SH4 0901/対日コーヒー輸出 約10億3,436万米ドルに対するFOB金額比 全国のコーヒー生産構成と対日輸出の商品UF構成 二つの独立した横棒グラフ。一つ目は全国のコーヒー生産構成(CONAB 2025年コーヒー生産調査第4回、全国5,650万袋・60kg換算に対する構成比)で、ミナスジェライス州 約45.7%、エスピリトサント州 約31.0%、サンパウロ州 約8.3%。二つ目は対日輸出の商品UF構成(Comex Stat 2025年、SH4 0901、FOB金額比)で、ミナスジェライス州 86.8%、エスピリトサント州 2.5%、サンパウロ州 8.3%。二つは母集団と単位が異なる別の統計であり、構成比を差し引きして差の原因を説明することはできない。表示は上位3州のみで合計は100%にならない。 全国の生産構成 ミナスジェライス州 約45.7% エスピリトサント州 約31.0% サンパウロ州 約8.3% CONAB 2025年コーヒー生産調査(第4回)/ 全国5,650万袋(60kg換算)に対する構成比 対日輸出の商品UF構成 ミナスジェライス州 86.8% エスピリトサント州 2.5% サンパウロ州 8.3% Comex Stat 2025年/SH4 0901/対日コーヒー輸出 約10億3,436万米ドルに対するFOB金額比
  1. 二つは母集団・単位・調査主体の異なる別の統計です。構成比を差し引きして差の原因を説明することはできません。
  2. 表示は上位3州のみで、合計は100%になりません。対日輸出にはこのほかバイーア州(1.3%)などがあります。
  3. 数値は2026年8月19日時点の集計です。
全国の生産構成(CONAB)と対日輸出の商品UF構成(Comex Stat)は、母集団も単位も異なる別の統計です。同じ州でも構成比は一致しません。

ここに、統計を分けて読む意味がはっきり出ています。エスピリトサント州は全国生産の約31%を占めているのに、日本向けの統計上の生産州としては2.5%にとどまります。なぜそうなるのかは、ここまでの統計からは分かりません。分かるのは、「全国の産地の地図」と「日本向けの地図」は別物であり、生産量が多い州と、日本向けの実績がある州を同じ意味で扱えないということです。

一方でミナスジェライス州は、生産統計でも、日本向けの統計上の生産州でも、輸出した会社の税務上の所在地でも上位に来ます。コーヒーの調達調査をこの州から始めるのは、統計上の根拠がある判断です。

サントスについては、別の注意が要ります。通関の93.9%を占めることは輸出手続きの集中を示しますが、サントスが産地だという意味ではありません。ややこしいことに、サントスは輸出した会社の税務上の所在地としても3.8%で表に現れます。同じ地名が、別々の欄に別々の意味で出てくるわけです。地名を見たら、それがどの欄の地名かを確かめる。この習慣だけでも、読み違いはかなり防げます。

ヴァルジーニャ(Varginha)やグアシュペ(Guaxupé)といった市町村も同じです。これらは輸出した会社の税務上の所在地であって、工場や農園の所在地ランキングではありません。企業調査をどの地域から始めるかを考える手がかりにはなりますが、そこに設備があると決めつけることはできません。

4. 鶏肉——統計上の生産州と、輸出した会社の税務上の所在地がずれる

コーヒーでは、統計上の生産州と、輸出した会社の税務上の所在地が、ほぼ同じ州を指していました。鶏肉などの家禽肉(約8億4,006万米ドル、40万452トン)では、数え方によって主役が入れ替わります。

2025年対日家禽肉輸出と鶏屠畜羽数の地域分布
分布
商品UF(FOB金額比)パラナ州 32.4%/サンタカタリーナ州 30.4%/リオグランデドスル州 11.3%/マットグロッソドスル州 8.5%/ゴイアス州 5.8%/サンパウロ州 5.1%
輸出者の税務UF(FOB金額比)サンタカタリーナ州 49.5%/パラナ州 35.7%/サンパウロ州 6.6%/ゴイアス州 3.6%
輸出者の税務上の市町村(FOB金額比)イタジャイ 49.5%/パラナグア 16.9%/クバタン 5.1%/ウビラタン 2.9%
URF(FOB金額比)パラナグア 35.6%/イタジャイ 26.7%/サンフランシスコドスル 22.0%/サントス 13.6%
IBGE 2025年速報・衛生検査対象の鶏屠畜羽数全国66億9,000万羽。パラナ州 34.4%/サンタカタリーナ州 13.7%/リオグランデドスル州 11.4%/サンパウロ州 11.3%
統計上の生産州では、パラナ州(Paraná)32.4%とサンタカタリーナ州(Santa Catarina)30.4%がほぼ並びます。ところが輸出した会社の税務上の所在地で数えると、サンタカタリーナ州が49.5%と半分近くを占めます。さらにIBGEの2025年速報で鶏の屠畜羽数を見ると、パラナ州34.4%に対してサンタカタリーナ州は13.7%と、今度は差が逆向きに開きます。

この開きは、輸出した会社の税務上の所在地と、衛生検査の対象になった鶏が屠畜された地域の分布を、別々に調べる必要があることを示しています。輸出した会社の税務上の所在地が一つの州に集中していることは、商流と法人所在地の集中を調べるべきだというシグナルとして使えます。

ただし、なぜそうなっているかは公開統計からは確認できません。企業グループの構造、本社機能の集約、商社の関与、工場ごとの輸出の実態は、いずれも別に調べる事項です。「サンタカタリーナ州に本社が集まっているからだ」という説明は、現時点では仮説にとどまります。

IBGEの数字にも読み方があります。これは衛生検査の対象になった鶏の屠畜羽数であり、農場の飼育量そのものではありません。しかも速報値です。屠畜の地域分布を見るときは、その統計が何を数えたものかを毎回確かめる必要があります。

5. 大豆——
別々の軸を、足し算しない

大豆(約2億5,737万米ドル、65万4,483トン)では、三つの軸がそれぞれ違う地域を指します。

2025年対日大豆輸出を異なる地域軸で見た分布
分布(FOB金額比)
商品UFマットグロッソ州 34.4%/ゴイアス州 31.0%/ミナスジェライス州 15.6%/サンパウロ州 8.8%/パラ州 3.4%
輸出者の税務UFマットグロッソ州 34.0%/ゴイアス州 29.8%/サンパウロ州 21.1%/マラニョン州 6.3%
輸出者の税務上の市町村リオヴェルデ(GO)19.3%/グアルジャ(SP)9.2%/シノプ(MT)8.9%/サントス(SP)7.4%/バルサス(MA)6.3%/ソヒーゾ(MT)6.2%/ロンドノポリス(MT)6.0%
URFサントス 75.9%/ベレン 15.9%/サンルイス 8.2%
統計上の生産州は、マットグロッソ州(Mato Grosso)34.4%とゴイアス州(Goiás)31.0%で、内陸の中西部が中心です。輸出した会社の税務上の所在地では、州で見るとサンパウロ州が21.1%で三番目に入り、市町村で見てもグアルジャ(Guarujá)やサントスが上位に来ます。そして通関はサントスが75.9%です。なお表の二段目と三段目は、同じ「輸出した会社の税務上の所在地」を、州と市町村という二つの粗さで示したものです。

これらを一つのランキングに足し合わせると、サンパウロ州が大豆の産地のように見えてきます。しかしそれぞれが別々の問いへの答えであり、足して一本の順位にする理由はありません。

では、この形から何が言えるのか。生産として申告された地域、輸出した会社の税務上の所在地として計上された地域、通関が行われた地域が、同じ場所に揃っていない。この状態そのものが、次に何を調べるべきかを教えてくれます。実際に誰が取引の主体になり、どの経路をたどり、どのターミナルから積み出されているのか——それらは統計の外側で確かめる事項です。

通関の75.9%という数字も、「大豆の75.9%がサントス港から積み出された」とは読めません。これはあくまで税関の管轄単位ごとの集計です。実際の積出港とターミナルは、ANTAQの港湾統計や船積書類、港湾事業者の情報で確認する領域に入ります。

6. 数字を重ねるときは、年と定義をそろえる

ここまでは、同じ2025年の同じ統計の中で数え方を変えてきました。年や定義の違うデータを重ねるときには、もう一段の注意が要ります。鉄鉱石が分かりやすい例です。

Comex Statで2025年の日本向け輸出(約9億5,564万米ドル)を見ると、統計上の生産州はパラ州(Pará)が48.9%で最大です。エスピリトサント州21.7%、ミナスジェライス州20.9%と続き、通関ではマラニョン州のサンルイス(São Luís)が50.6%を占めます。

一方、ANMの鉱物年報は、別の年・定義で生産量をまとめています。2024年の鉄鉱石精鉱等の生産量は全国約4億4,860万トンで、ミナスジェライス州が約57.0%、パラ州が約39.7%です。

生産量ではミナスジェライス州が最大なのに、日本向けの統計上の生産州ではパラ州が最大——ここで「日本向けはパラ州産に偏っている」と結論づけたくなります。ですが、ANMは2024年、Comex Statは2025年のデータで、対象範囲も統計の定義も違います。二つの比率を引き算して原因を語ることはできません。同じ年、同じ定義のデータをそろえるところが、その分析の出発点になります。

通貨についても同じです。Comex Statの金額は、物価調整も為替調整もしていない米ドル建てのFOB金額です。日本側の輸入統計は円建てで、金額の評価基準も違います。両国の統計を突き合わせるには別の検証が必要で、この記事では扱いません。

さらに、Comex Statの数字自体も固定ではありません。2018年以降の輸出統計は輸出申告(DU-E)をもとにしており、申告の訂正によって過去の数字が更新されることがあります。社内資料に数字を残すときは、取得日を書き添えておくと、後から照合できます。

7. 統計が答えてくれないこと

ここまでの作業で絞り込めるのは、品目と地域、そして調べる順序です。個々の企業までは届きません。

Comex Statは輸出企業の名前を公開していません。税務上の守秘を理由に、企業と品目と相手国を結びつけたリストも提供されません。市町村別のデータでも、秘匿への配慮から品目は4桁の分類までしか開示されません。統計をどれだけ丁寧に読んでも、そこから供給元の社名が出てくることはないのです。

同様に、次の事項は統計の外にあります。

  • 工場、農場、鉱山の所在地と、輸出主体との関係
  • 現在の生産余力と、供給可能な時期
  • 日本向けの輸出経験、日本仕様への適合
  • 最低ロット、荷姿、品質保証の体制
  • 認証、衛生管理、残留物、トレーサビリティ
  • 実際の積出港とターミナル
金属棚に保管品が並ぶクリチバの倉庫内の通路
ブラジル・クリチバの倉庫内。保管状態や設備などの現場条件は、貿易統計だけでは確認できません。 Photo: Daniel Andraski / Pexels

逆向きの読み方も成り立ちません。日本向けの実績が小さい州について、「日本と取引できる企業が少ない」と読むことはできません。統計に現れていないことは、存在しないことの証明ではないからです。

つまり、統計調査には終点があります。品目を決め、統計上の生産州で候補を絞り、生産統計と照らし、輸出した会社の税務上の所在地から「どの地域の企業と商流を調べるか」の見当をつけ、通関の集中から物流を調べる手がかりを得る。そこまで来たら、次は企業と商材そのものの確認です。その段階で何を確かめるかは、ブラジルの素材・商材を検討するときに確認したいことで整理しています。統計が示すのは調べに行く先であって、取引できる相手ではありません。

8. 統計から企業調査へ移るまでの順序

ここまでを作業順に並べると、次のようになります。右の列は、その段階で持ち込むと後の判断を狂わせる思い込みです。なお表の項目名は、統計画面での呼び名に合わせています。

統計から企業調査へ移るまでの8段階
段階この段階で答える問い持ち越してはいけない前提
1. 商品を定義する原料か加工品か。規格、荷姿、用途は何か商品名が同じなら同じもの
2. NCM8桁を確定するブラジル側の分類ではどのコードに入るかコードが同じなら規格・品質・用途も同じ
3. 一般データで商品UFを見る対日輸出はどの商品UFに計上されているか。金額と重量、年次の動きは輸出額最大の州=最大の生産地
4. Municipality moduleを別に引く輸出者の税務上の所在地はどこか上位市町村=供給工場の所在地
5. 独立した生産統計と照らすIBGE、CONAB、ANM等は、何を、いつ、どの単位で数えているか生産・収穫・屠畜・精鉱生産は同じ指標
6. URFから物流の仮説を立てる通関はどこで行われているかURF名=実際の積出港
7. 企業調査へ切り替える企業、設備、能力、認証、日本向け経験は州の輸出実績=特定企業の供給能力
8. 直接確認・現地確認を行ういま供給できるか。日本側の要求仕様に合うか統計に出ている=現在も供給できる
特に大事なのは二つです。統計上の生産州と、輸出した会社の税務上の所在地を、同じ指標として足したり引いたりしないこと。そして生産統計と重ねるときに、年と定義をそろえること。この二つを守るだけでも、地域の読み違いはかなり減らせます。

9. 統計を離れる地点を、先に決めておく

貿易統計から作れるのは、供給元のリストではありません。作れるのは、どこを調べに行くかを決めるための地図です。しかもその地図は、生産、輸出申告、輸出した会社の税務上の所在地、通関という別々の記録からできていて、一枚には重なりません。

重ならないことは、統計の欠陥ではありません。違う出来事を、それぞれの定義で記録した結果です。分けて読めば、どの品目を、どの地域と産業から調べ始めるかまでは、公開データだけで絞り込めます。企業の名前、設備、供給余力、そして誰と話すかは、その先の工程で確認する事項です。

だからこそ、初期調査では統計を離れる地点を先に決めておくと、時間の使い方が変わります。品目の分類と候補州が定まり、独立した生産統計との照合が済み、通関の傾向まで見えた——そこまでが公開統計の役割で、以降は企業と商材そのものの確認に切り替える。この線引きを最初に引いておくことが、初期調査を必要以上に長引かせないための現実的な方法だと、当社は考えています。

参考資料

本文の数値は、以下の資料から2026年8月19日時点で取得・集計しました。一次資料と、それをもとに整理された補助資料を分けて示します。

一次資料

補助資料

Comex Statは申告の訂正により過去の値が更新されることがあります。本記事の数値は2026年8月19日時点の集計であり、実務で参照する際は再取得のうえ確認してください。

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