ブラジル産パフィア——産地から知る「ブラジルの人参」

ブラジル・ケレンシア・ド・ノルチの乾燥ハウスでパフィアの根を広げる作業
撮影・提供:ASPAG

本記事で取り上げるのは、パフィアという植物の根です。ブラジルでは「ジンセン・ブラジレイロ(ブラジルの人参)」と呼ばれ、日本でも「パフィア」や「ブラジル人参」の名前で知られてきました。名前に「人参」とついていますが、朝鮮人参とは別の仲間の植物です。根は大きく育つものもあり、パラナ州の産地で計量された根の一つは、2.57キログラムありました。

2026年5月、この根の主要な産地であるパラナ州ケレンシア・ド・ノルチは、ブラジルの政府機関から産地名の保護——地理的表示——の登録を受けました。ブラジルの植物原料について、産地と品質の結びつきが公的に認められた一つの例です。

この記事では、パフィアという素材について、名前の整理、産地の環境、収穫と加工、用途と商流、産地認定の意味、研究の現状、そして原料として見るときの確認点までを、現地の写真と資料を交えて順にご紹介します。

収穫したパフィアの根を秤で計量する様子
撮影・提供:ASPAG

1. パフィアとは——まず名前から確かめる

パフィアは、ヒユ科の多年草です。ブラジルを中心とする南米に分布し、主に地中の根が利用されます。「人参」の名前がついていますが、朝鮮人参(ウコギ科)とは植物学上の類縁関係はなく、根の形と用いられ方の連想から、この呼び名が定着したと考えられています。

この素材を調べるとき、最初に整理しておきたいのは名前です。「パフィア」「ブラジル人参」「Brazilian ginseng」という呼び名は、実は一つの植物だけを指していません。主に次の2種が、同じ流通名で扱われてきました。

「パフィア」と呼ばれる主な2種
Pfaffia glomerata Hebanthe erianthos(旧名 Pfaffia paniculata)
ヒユ科 ヒユ科
主な呼称 ジンセン・ブラジレイロ、ファフィア スマ(suma)
日本での呼称 パフィア、ブラジル人参 パフィア、ブラジル人参、スマ
主に知られる成分 β-エクジソン パフィア酸、パフォシド類
本記事で扱う種 ○(パラナ州で栽培)

一つは、パラナ川流域などに分布する Pfaffia glomerata(パフィア・グロメラータ)。ブラジル国内で「ジンセン・ブラジレイロ」として栽培・流通している中心的な種で、β-エクジソンという成分が品質の指標とされています。もう一つは、英語圏で「スマ(suma)」とも呼ばれてきた種で、かつて Pfaffia paniculata の学名で知られていましたが、現在の分類では Hebanthe erianthos という別属の植物に整理されています。海外のサプリメントや化粧品原料の表記には、いまも旧学名に由来する名称が残っています。

つまり、「パフィア」という名前だけでは、どちらの植物を指しているのか確定できません。文献や規格書を読むときも、取引の場面でも、学名まで確認することが出発点になります。本記事で取り上げるのは、このうちブラジル・パラナ州で栽培されている Pfaffia glomerata です。

2. 産地——パラナ川の氾濫原とケレンシア・ド・ノルチ

Pfaffia glomerata は、ブラジル南部を流れるパラナ川の氾濫原や中州に自生してきた在来植物です。増水のたびに土が入れ替わる川沿いの環境に適応した植物で、栽培もこの流域の条件を生かして行われています。

その代表的な産地が、パラナ州北西部のケレンシア・ド・ノルチという町です。2026年時点の報道によると、この地域では約30ヘクタールの畑でパフィアが栽培され、生産者や間接的な従事者を含め、約30家族が関わっています。年間およそ300トンの生根、乾燥根にしておよそ60トンが生産されています。生産のおよそ95%は輸出され、主な仕向先はフランス、中国、そして日本です。

小規模な家族農家が、川沿いの環境に合わせて種をつなぎ、産地としてまとまって出荷する——パフィアは、ブラジルの大規模農業とは違う顔を持つ農産物です。その中心にあるのが、Associação de Pequenos Agricultores de Ginseng de Querência do Norte(ASPAG)。ケレンシア・ド・ノルチの小規模ジンセン農家で構成される生産者団体です。

3. 収穫から乾燥まで——根の素材ができる工程

収穫では株ごと掘り上げ、土を落として根を選別します。

掘り上げられた根は、風を通した乾燥棚に広げられ、時間をかけて水分を抜いていきます。乾燥を終えた根は、そのままの乾燥根のほか、裁断品や粉末などに加工され、原料として出荷されます。

掘り上げたばかりのパフィアの根と収穫中の畑 裁断・乾燥されたパフィアの根
掘り上げたパフィアの根(左)と裁断・乾燥後の根(右) 撮影・提供:ASPAG

この記事に掲載している収穫・乾燥・加工の写真は、ケレンシア・ド・ノルチの産地で、ASPAGによって撮影されたものです。きれいに整えられた商品写真ではありませんが、素材がどのような場所で、どのような手を経て原料になるのかを、そのまま伝えてくれます。

4. 何に使われているのか——用途と商流

こうして出荷された根は、そのあと何になるのか。ブラジル産のパフィアは、主に健康関連の用途と化粧品用途の原料として使われてきました。2021年の報道では、輸出された根が茶やカプセルなどの形で消費されていることが伝えられ、2026年の報道でも、健康・化粧品分野向けの輸出が続いているとされています。産地では、石けんやリキュールといった地域の加工品づくりも報じられています。

商流の面では、先に触れたとおり生産のおよそ95%が輸出に向かいます。2021年には、在庫が足りず、他国からの引き合いを断ったことがあると報じられています。また、中国の事業者が現地加工工場の設置に向けて用地を取得したことも、同年の報道で伝えられています。産地の生産規模は乾燥根で年間およそ60トンですが、複数の国に向けた国際的な商流がすでに成立している原料です。

化粧品用途については、一つ注意があります。海外の化粧品原料の表記には旧学名(Pfaffia paniculata)に由来する名称も見られるため、用途や配合例を確認する場合にも、植物種と名称の対応を確かめる必要があります。

5. 産地の名前が認められた——地理的表示という制度

地理的表示(GI)とは、「その産地で作られたからこその品質」を持つ産品について、産地名の使用を法的に保護する制度です。ワインのシャンパーニュがよく知られた例で、日本にも同様の制度があります。

ブラジルでは、国立工業所有権庁(INPI)がこの制度を所管しています。2026年5月、INPIはケレンシア・ド・ノルチ産のジンセン(パフィア)に対して、地理的表示の一種である原産地呼称(Denominação de Origem)の登録を認めました。申請したのは、先に触れた生産者団体のASPAGです。

原産地呼称は、単に「その土地で作られた」ことではなく、「産品の品質や特性が、自然的・人的要因を含む産地の地理的環境に本質的に由来する」ことが審査で認められて登録されるものです。報道によれば、この産地のパフィアは、品質指標であるβ-エクジソンの含有量が国内の他産地の平均を上回ることが、認定の根拠の一つになりました。

また、この登録に関するINPIの技術仕様書では、対象となる植物が Pfaffia glomerata という学名で特定されています。流通名ではなく学名まで公的な書類で確認できる——名前の整理から始めた本記事の視点から見ても、これはこの登録が持つ実務的な価値の一つです。

原料の出所を確かめる立場から見ると、この登録は「確認の手がかりが公的に整った」という意味を持つと、当社は考えています。

INPIが発行した地理的表示(原産地呼称)の登録証明書
出典:INPI/画像提供:ASPAG

6. 研究で分かっていること、まだ分かっていないこと

パフィアは、ブラジルでは古くから民間の伝統的な利用——とりわけ強壮を目的とした利用——が報告されてきた植物で、「パラ・トゥード(何にでも)」という俗名でも呼ばれてきました。ただし、伝統的に利用されてきたことと、効果が科学的に確認されていることは、分けて考える必要があります。

現時点の研究状況は、次のように整理できます。この植物が研究対象とされてきた背景には、β-エクジソンをはじめとするエクジステロイド類やサポニン類を根に含むことがあります。これらの成分を対象に、試験管内や動物での基礎研究の報告が蓄積されており、2024年には植物学・成分・生物活性を網羅した学術レビューも発表されています。一方で、ヒトでの有効性を確認した臨床研究は限られており、「何かに効く」と言える段階にはありません。本記事でも、効能についての断定は行いません。

なお、日本の食薬区分では、「スマ」(他名: パフィア、ブラジルニンジン)の根が、厚生労働省の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収載されています。ただし、このリストは植物の学名まで特定するものではなく、収載されていることが、食品等としての輸入・使用・表示を包括的に認めるものでもありません。実際の取扱いは用途・形態・表示の内容に応じて個別の確認が必要であり、食品として扱う場合、医薬品的な効能効果を標榜することは認められません。原料として検討する際には、この前提を踏まえて、所管の機関や専門家への確認をおすすめします。

7. 原料として見るときの確認点

パフィアに限らず、ブラジルの植物原料を検討するときの基本は、「確認できたこと」と「確認が必要なこと」を分けて進めることです。パフィアの場合、確認の中心になるのは次の点です。

パフィアを原料として見るときの確認ポイント
確認項目 見るポイント
種名 「パフィア」という流通名ではなく、学名(Pfaffia glomerata か、それ以外か)がどの書類で確認できるか
産地 どの地域の、どの生産者によるものか。原産地呼称の対象産地であれば、その表示や証明をどう確認できるか
形態と規格 乾燥根・裁断・粉末・エキスのどの形態か。粒度や水分などの規格はどう定められているか
分析値 指標成分(β-エクジソン等)や残留農薬・重金属などの検査成績書が提示されるか
情報の出どころ その説明は供給元自身のものか、伝聞か。日付のある資料か
日本側の手続 食品として輸入する場合は食品衛生法に基づく届出等が必要。用途や形態によって確認事項が変わるため、個別の判断は所管の機関や専門家への確認を

すべてが最初から揃っている必要はありません。どの書類が確認できて、どれがまだ確認できていないのかを把握しながら進めることが、遠い産地の素材と長く付き合うための土台になります。確認の進め方そのものは、ブラジルの素材・商材を検討するときに確認したいことでも整理しています。

8. 日本との接点——いま改めて見る理由

日本は、ケレンシア・ド・ノルチ産パフィアの主要な輸出先の一つです。日本国内でも、「パフィア」や「ブラジル人参」という名前の原料は、健康食品分野で扱われてきました。ただし、この名前だけではどちらの種を指すかは特定できません。先に触れた食薬区分の収載も、学名を特定するものではありません。

その意味で、パフィアは新しく現れた素材ではありません。変わったのは、産地の側の整理です。2026年の原産地呼称の登録によって、産地の範囲、対象となる植物の学名、生産者団体といった情報が、公的な登録資料として整理されました。すでに商流のある原料について、出所を確かめるための情報が以前より整った——これが、この素材をいま改めて見る意味だと、当社は考えています。

当社は、ブラジル現地の協力者を通じてこうした産地や素材の情報を確認し、日本の企業がブラジルの素材を検討する際の、情報の整理と確認を支援しています。名前を確かめ、産地を確かめ、書類と研究の現状を確かめる——本記事でたどってきた手順は、そのままこの素材と向き合うときの手順でもあります。

産地の名前を得たばかりのこの根が、これからどのように扱われていくのか。当社も、現地の情報を確かめながら見ていきます。

ご相談について

ブラジル産パフィアをはじめ、ブラジルの植物原料の産地や供給元の確認について、検討の初期段階からご相談いただけます。内容が固まっていなくても構いません。検討中の内容や、確認したいことをお聞かせください。

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